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皇位継承と和の心
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No.47 神社本庁機関紙が「断固阻止」を「決断」(長文失礼) 彦十郎 さん 
    2005.12.13 15:44:30 返信

 
私は神社本庁の機関紙『神社新報』(週刊)を購読していますが、その最新号
(12月12日号)の「論説」(他紙の社説に相当)に「皇室典範改正問題:皇位
継承制度と斯界の決断」と題する記事が掲載されています。

この社説の結びに

>その喫緊の課題が、伝統の「変容」をも「伝統」と強弁する報告書を基にした
「皇位継承制度法案」(皇室典範改正案)の国会提出を総力を挙げて断固阻止す
ること、であることはいふまでもない。

とあります。

従来、本庁及び新報、それに神道政治連盟まで含めても、この問題について「憂
慮」や「懸念」「拙速は厳に慎まなければならない」という曖昧な表現を繰り返
してはきましたが、「断固阻止」といった言葉を公式に使ったことは、私の知る
限り無いと思います。先日の「皇室典範改正問題に関する神社本庁の基本見解」
http://www.jinjahoncho.or.jp/news/171202.htmlでも、「旧皇族の皇籍復帰」に
まで言及しながら、はっきり「典範改正反対」を言うことは避けていました。

神社界は遂に「決断」したようです。

先週までの「論説」は同社サイトhttp://www.jinja.co.jp/で読めますが、
最新分はまだアップされていませんので、以下に全文転載します。(あわてて手入力したのでミスがあるかも知れません)

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神社新報12月12日号「論説」 「皇室典範改正問題:皇位継承制度と斯界の決断」

 周知の通り、去る十一月二十四日、小泉首相の私的諮問機関である「皇室典範に関する
有識者会議」(吉川弘之座長)が報告書を首相に提出した。

 報告書は主に、@皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大すること、A皇位
継承順位については、天皇の直系子孫かつ長子を優先すること、の二点を提言。吉川座長
は「ただちに現実の制度として発効することを考へて議論を進めてきた」上での結論であ
ることを強調した。

 小泉首相やその周辺及び「有識者会議」のメンバーたちは、何故に「男系」から「女系」
への転換といふ有史未曾有の皇位継承制度の性急な実現を企図してゐるのだらう。その真
意はどこにあるのか。
            ○
 この報告書の特徴は、国(政府)のこれまでの無策による現実を前提として「現行の皇
室典範を前提にすると、現在の皇室の構成では、早晩、皇位継承資格者が不在となるおそ
れがあり」とか、あるいは「皇位の継承は国家の基本にかかわる事項であり、これについ
て不安定な状況が続くことは好ましいことではない」などと、現に皇位継承資格者の男子
皇族がをられることを無視した無責任な不安論を徹頭徹尾国民に煽ってゐることにある。

 そもそも、皇位の継承が国家の基本に関はる重大事項であると認識することと、皇位の
継承に「不安定な状況」が現に存在し、それが将来的にも続くであらうと認識することと
は全く別次元の問題である。報告書のいふ「不安定な状況」とは、当の報告書自身が述べ
ているやうに「非嫡系継承の否定、我が国社会の少子化」によって齎されたものであり、
極めて現実追認的な認識に過ぎない。

 国家の基本に関はる皇位継承の問題を、先進国には例を見ない少子化傾向の急激な進展
といふ正しく国家存亡の基本に関はる最重要の政治的社会的問題の未解決を前提に、しか
もそれと絡めて結論づける報告書の論法は、少子化問題に対するこれまでの国(政府)の
無為無策の責任を国民は無論、こと皇室にまで転嫁しようとするものであり、断じて容認
できるものではない。

 このことに関して、朝日新聞の岩井克己編集委員は「若い世代の置かれた厳しい社会状
況を映す少子化を『産まない選択』は考えにくい皇室に適用するのには唐突感がある」と
報告書に見られる安易な論拠援用の手法を批判してゐるが、この他にも報告書には多々首
を傾げざるを得ない強引かつ性急な論法が見られる。
            ○
 報告書は、@国民の理解と支持を得られるものであること、A伝統を踏まへたものであ
ること、B制度として安定したものであること、を総合的に判断したとして、女性天皇・
女系天皇の容認と長子優先継承を柱とする「将来的にわたって安定的な皇位継承制度」を
提言してゐる。

 だが、報告書を仔細に検討するならば、そこには明らかな論旨のすり替へや飛躍、さら
には学問的粉飾が散見される。例へば@では、多くの国民が「女性天皇」を支持してゐる
といふ「事実」が、そのまま「女系天皇」を積極的に受容・支持する根拠とされてゐる。
歴史的にも存在した女性天皇を国民が容認・支持することと、男系か女系かの二者択一的
且つ誘導的な世論調査による女系天皇容認論があたかも同次元のこととして論じられ、し
かも女系天皇容認の論拠とされてゐるのである。

 さらに報告書は、「女系の天皇が誕生する場合、こうした伝統的な皇位継承の在り方に
変容をもたらすことになる」とも述べてゐるが、真摯に検討すべきは正に「伝統」と「変
容」の内実であり、その及ぼす国家的国民的影響ではないのか。それを欠如した報告書の
提言する新たな「皇位継承制度」の実施は絶対に認められない。
            ○
 上記したやうに、報告書そのものの拙速さや「有識者会議」における論議の不十分さ・
不備を指摘することはたやすい。しかし斯界にとっての最も重要な課題とは、単に報告書
批判のための批判ではない筈である。報告書のいふ国民の理解と支持、伝統、安定性を総
合的に勘案した皇位継承制度が一番望ましいことはいふまでもないが、斯界がこれら三点
に優先順位を付けた場合、どれを最優先とするのか。今や、斯界はその選択の決断を迫ら
れてゐる。

 斯界が決断すべき選択は、移ろひ易い各時代の国民意識でもなく、無機的作為的な「安
定性」でもない。「天壌無窮」を信じ、生きてきたこの国の「伝統」を措いて他にはない。

 現在の皇室のみを中心とする男系か女系かの選択ではなく、神武天皇以来の男系継承の
歴史と伝統があって初めて今の皇室が存在すること、この事実を今こそ斯界は広く国民に
訴えるべきである。その意味で、今般、神社本庁が「皇室典範改正問題に関する神社本庁
の基本見解」において、報告書が「補論」として簡単に採用を困難とした旧皇族の皇籍復
帰をも含む宮家の存続や拡大といった具体的方途の検討を初めて決断・表明したことは画
期的なことであると評価できよう。
            ○
 今、斯界が問題とすべきことは、男系主義か、女系主義か、はたまた双系主義かといっ
た主義の問題ではない。天皇とは何か、皇位継承とは何かを、皇祖皇宗の御神意を体して
血の滲むやうな努力と葛藤を通して今日の皇室を存続せしめた各時代の先人の営みの尊さ
こそが「伝統」であるということを、いかにして現在及び将来の国民に粘り強く訴へ続け
ることが出来るか、これが斯界の最大の課題なのである。

 その喫緊の課題が、伝統の「変容」をも「伝統」と強弁する報告書を基にした「皇位継
承制度法案」(皇室典範改正案)の国会提出を総力を挙げて断固阻止すること、であるこ
とはいふまでもない。

   


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