長根英樹 メッセージ
 ― 論文&マスメディア掲載 ― 

「季刊 ki-mono」2003 秋号(繊研新聞社)
  きものを着ることで見えてくる
  「スロークロージング」の発想
 

 
きものを着ることで見えてくる
「スロークロージング」の発想
                  「きもの村」 長根英樹さん
   
 30歳前まできものとは無縁で、男の現代的なお洒落は西洋にあり、
と思い込んでいました。しかし米沢の男のきもの総合メーカー「鈴源
織物」と出会い、多彩な男物のラインナップを目の当たりにして、日
本にもすばらしいおしゃれの世界があった、それも現代に通用するダ
ンディズムの世界があったのだと感銘を受けました。これが縁で鈴源
織物に入社し、その後、呉服店勤務を経て、現在はフリーのきものプ
ロデューサーとして活動、HP「きもの村」を運営しています。
 自分が本当に好きできものを着ているか――きもの業界に必要なの
は、自らユーザーとして着用し、全体のコーディネイトを考えたり、
さまざまな場面での動きやすさや諸対応、メンテナンスなどの問題を
経験する立場から、現代生活に見合ったトータルなきものスタイルを
探り、提案していくことだと思います。
 「きもの村」では、具体的な提案として裾をスリムにした和魂洋才
のズボン風袴を開発しました。旅行等の活動用途に限らず、フォーマ
ルやオンビジネスでの装いを考慮して、袴ならではの凛とした襞目
(ひだめ)など和の基本ディテールを生かしつつ、前チャックや脇ポ
ケットなど洋裁の工夫を加味した現代袴です。また、この袴とのセッ
トアップで装う「半袖膝丈きもの:新夏装」も開発中です。
 最近、自治体では「エコスタイル」として夏の軽装を推進していま
す。しかし多くの場合、ノージャケット&ノータイにYシャツの上ボ
タンを外しただけの格好になっています。きもの衿は、涼しさと礼の
心の表現を両立したデザインです。これを応用することで、日本らし
い新たな夏スタイルが提案できると考えました。
 きものを着ていると、改めて衣食住と地域の自然環境や精神文化と
の深いつながりを実感します。きものが好きになり、きものの魅力を
探っていると、和の心、美意識、価値観の魅力を実感することができ
ます。
 こうした経験を踏まえて、私は、きものを通じた温故知新により和
の文化、精神性のすばらしさを見つめ直し、現代に発展・昇華させて
いく「スロークロージング」を提唱しているところです。今後、伝統
と蓄積をもつ各地域の小売店やメーカーなどとのコラボレーションで
スロークロージング運動を展開し、現代生活にマッチしたきものの楽
しみを追求していきたいと思います。また、こうした動きが、きもの
ビジネスの永続性にもつながっていくものと考えています。


新夏装:半袖膝丈きものとズボン風袴のセットアップ
「きもの村」のHPは、http://www.kimono.gr.jp/


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