長根英樹 メッセージ
 ― 論文&マスメディア掲載 ― 

小沢一郎政治塾応募小論文1
  21世紀における日本の役割
 

「小沢一郎政治塾」応募小論文 - 1 「21世紀における日本の役割」

2000.11.28 提出





















          ◇

   21世紀における日本の役割
              長根 英樹

 「憲法の制約」、この言葉を用いて国際的
な役割の遂行を躊躇する発言を聞く度に、大
きな違和感と共にもどかしさを感じる。
 「制約」という言葉の裏には“やりたくて
もやれない”というニュアンスを感じるが、
そもそも国家としての理念、在るべき姿と憲
法の関係をどの様に捉えているのだろうか。
 まず国家理念、在るべき理想の姿があり、
それを明文化したものが憲法であるはずで、
時代環境の変化により理念、在るべき方向と
憲法との間にギャップが生ずるのであれば、
憲法を修正し「制約」を除去しようとするの
が責任ある政治家の立場ではなかろうか。
 もし やれない のではなく“やらない”
との立場で憲法修正の必要がないとするなら
ば、「憲法の制約」ではなしに「憲法に示す
所の我々の国家理念に基づき」という言葉で
役割遂行の是非を語るべきであろう。
 あたかも国家理念よりも憲法が高位にあり
侵すべからざるものであるが如く錯覚し、本
来在るべき国家像を模索することを怠ってき
た政治社会の閉塞状況を見るところである。

 さて現実問題として国家理念と現憲法との
間にギャップは存在するのであろうか。
 憲法の立場から還元するのではなく、まず
21世紀の国際状況を展望する立場から、国
の在るべき姿そのものを考察してみたい。
 東西2大対立構造が崩れ多様化が進む現状
において、今後経済、環境、文化等の幅広い
面において利害対立が予想され、軍事面のみ
ならずトータルな安全保障概念によるせめぎ
合いが生じるものと思われる。
 国際的な利害調整、秩序形成維持に際し、
その解決手段は軍事力から民主的アプローチ
へと大きく比重が変化し、現状においてその
唯一の窓口機関である国連の役割がますます
重要となり存在意義が問われることとなる。
 一方国連が秩序維持機関として真の役割を
果たす上で、信頼性向上という大きな課題が
存する現状を認識しなければならない。
 民主的で高度な解決を図るためには、機関
決定が尊重され完全に履行されることが重要
であり、この円滑な運営を最終的に担保する
のが参加各国の機関への信頼となる。
 しかるに現状では、拒否権問題など民主的
意思決定システムの面で充分な信頼が得られ
ず、これが権威の危うさにも繋がっている。
 日本は、国連の信頼性を高め枠組みを強化
する意味から、積極的に国際的な役割を担い
国連改革推進に努めるべきと考える。
 この際の役割分担は、経済技術面に留まる
ことなく軍事面も含めて国としての影響力に
応じた全面的なものである必要がある。
 これにより改革推進に向け各国から支持を
得て説得力を持つことが可能となる。
 真の国連改革のためには、G8各国以外に
多くの途上国の賛同が不可欠となる。
 既得権による構造硬直化の弊害は国内のみ
の問題ではなく、国際社会においても同様で
ありよりシビアでさえある。
 こうした中で国連改革を具現化するために
は、一方で常任理事国入りを目指し体制内部
からの変革を目指しつつ、他方では個別外交
を重ねることにより信頼共感の輪を広げ協調
ネットワークを構築し、この賛同国の連携を
背景に体制側を牽制していくという両方向の
アプローチが重要と考える。
 個別の信頼共感醸成、ネットワークを広げ
ていくには、経済力、技術力、高邁な理想と
理論体系の力の他に、理念のバックボーンと
も言える文化の力が重要となる。
 「仁」という徳を以て治め、「忠」の義に
より理想に身を委ねる武士道スピリッツは、
西洋ノブレスオブリージュとも相通じ、理念
主導の国際協調主義と高い次元で合致する。
 和の文化を積極的に伝え、人と人としての
共感を深めていく交流をすべきと考える。
 以上の在るべき国家像を踏まえあらためて
憲法の文言を再吟味してみる。
 前文はもちろん、九条も国際協調の理念を
担保とし国権戦争放棄を規定している。
 すなわち日本国憲法は1国単独では成立し
得ない、国際協調が前提となった非常に理想
主義的な憲法であり、武士道精神の文化土壌
があってこそ昇華可能な、高度なイマジネー
ションによるある種ファンタジーともいえる
先進的な憲法と捉えられる。
 この理想憲法を真に現実化、機能たらしめ
るためにも積極的な国際的役割の遂行が必要
であり、この意味において在るべき国家像、
国家理念と憲法との間に乖離はない。
 国家理念を記す憲法の精神に則り、崇高な
理想を掲げ国際的な役割を遂行し信頼を得、
国際的な秩序維持体制の確立を目指すことが
重要であり、これを経済、技術、理念、文化
の面で先導していくことが21世紀の日本の
役割と考えるところである。

2000.11.28 提出


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