1997.12.08 きものマネジメント きもの流通新聞[第2部]特集号
インタビュー INTER VIEW
インターネットのホームページ作り
お店の個性をどう表現するか
日常の業務との連動を考える
鈴源織物有限会社 社長付 長根英樹氏
きもの関連の企業では最も早くからホームページを立ち上げたのが、
米沢の男のきものメーカーの鈴源織物有限会社である。もともと大手
広告代理店に勤務して同社に入社した長根英樹さんがその仕掛人だが、
やはりインターネット関連のセクションで働いていたというだけあっ
て、自ら発案して自分でデザインをして今日まで至っているという。
同社のホームページでも告知されている銀座もとじでの「男のきもの
・平成ニュースタイル展」の会場で聞いてみた。
――鈴源織物さんがホームページ
を開設した動機からお聞かせ願え
ますか?
長根 九五年十月に開設して、二
年になりますが、とにかく一般の
消費者の方々にきものに関する情
報にもっと接してもらって、良さ
を再発見してもらいたいという気
持ちでした。印刷媒体といっても、
雑誌にしても季刊であったり、タ
イミング的に間がありすぎている
し、かといって昔はあった親から
の伝承もどんどん少なくなってい
るわけですから。
――きもの業界の中ではとても早
い時期の開設と思いますが、どな
たが作られたのですか。
長根 少し知識がありましたの
で、私自身で作ってみました。業者
にまかせたのでは、うちなりの個
性というものが、出ないと困りま
すから。
――これまでのアクセスは。
長根 二年間で一万五千前後で
しょうか。一日二十回をどう見る
かですが、私はとても有難いとい
う気持ちがしています。ページを
見て、そういうことをやっている
のなら…と、是非織元見学したい
と神奈川からご夫婦でお越しに
なったこともあります。
――ページづくりでは、どんな点
に注意したのでしょう。
長根 そうですね。日々更新とい
う気持ちで創ってみました。きれ
いな画像も大切なのでしょうが、
HPを見た方達との交流のほうが
もっと大切と思い、交流の場づく
り、レスポンスを重視しています。
そんなスタンスですから、物売る
ためにはつくっていません。特に
当社の扱う男物などはいくらパソ
コンの解像度が上がっても地風や
素材感はとても表現できないで
しょうから。
――具体的にはどんなページで
しょうか。
長根 きものフォーラムという
コーナーを作りまして、きものサ
ロンときものコラボレーションの
二つの窓口を作りました。「私はこ
んな着方で楽しんでいます」など、
きものを好きなユーザーの方達に
自由に交流してもらいたいという
のがきものサロン。一方で業界の
人達と一緒になって業界を育てて
ゆければというのがきものコラボ
レーションです。
――反応のほうは、どうでしょう。
長根 会ったこともない人から
メールがきたりして、業界にこう
いう場が欲しかったと言われたり
しています。勿論インターネット
ですから、一般の方も見ることが
できるわけで、業界内の発言はし
づらい面もあるかもしれません
が、これからは消費者に対して隠
して話していくような姿勢はどん
なものでしょう。オープンに話し
をしてゆける環境も大切です。業
者であれユーザーであれ、届いた
意見に対して機敏に対応していか
なければいけないと思っていま
す。
――確かに、画像に凝ったホーム
ページは、最初のうちはいいので
すが、いつも見るのに時間がか
かって、イライラしてしまいます
ね。
長根 神奈川県にお住まいの一般
のご夫婦である沢井さんが開設し
た「きものクラブ」でも、談話室
コーナーが人気となっています。
テキストベースのHPですが、と
ても反響があり喜ばれているよう
です。一人一人のコミュニケー
ションが大切ということでしょ
う。メールをもらっても、次の更新
は一カ月後というのでは喜ばれな
い。そのためには、業者まかせにせ
ず、難しいことはできなくてもい
いから、自分でHPを更新できる
仕組を作っていくことも大事にな
るでしょう。
――これからHPを作ろうとする
お店に対して、長根さんなりに何
かアドバイスを頂けたらと思うの
ですが。
長根 私は、なるべく自分でメッ
セージを作っていくことが大切だ
と思っています。インターネット
のホームページというのは、自分
発信が出来るメディアという意味
でも画期的なのだから、せっかく
のこうした世界を業者に任せて画
一的にしてしまってはもったいな
いと思いますよ。お金を払って他
人の手にまかせるのでなく、自分
達で作り、また直接レスポンスを
返していくことによって、その店
その人の雰囲気が伝わっていくと
思います。
――きもの業界ではよく、アクセ
スが少なければ開設しても無意味
ということで、そのへんで話しが
終わってしまうことが多いのです
が、長根さんは『見てもらえるため
の工夫』として、どんなことを気に
かけていますか。
長根 きちっと各社の検索のサイ
トに登録して知らせることも大
事。内容の更新、毎回毎回がリレー
ショナルなものであることも大切
と思います。一対一の会話のよう
なものですから、あまりキチっと
した無機質なものにしないで自分
の色を出していくことも大事で
しょう。それぞれの店の色がでる
ことによって、味がでて、コミュニ
ケーションがひろがっていくと思
います。
――あまり難しく考えずに、ホー
ムページづくりを簡単なものにし
て、自分達で作りながら、レスポン
ス良くということになりますね。
長根 そうですね。それを仕事に
してプロになる訳ではないのです
から、ただ、良いHPを作ろうと、
それだけのために続けていこうと
すれば大変になると思います。
日々の仕事、店でやっていること
がそのままHPに反映されれば良
い。日々の商売、顧客への対応、営
業方針…それが自然とHPに連動
していくものと思います。
――ホームページを運営してゆく
コストはどの程度かかっているの
でしょう。
長根 それは話しにならないくら
い安いものです。現在、年間一万八
千円ほどですか。初年度だけは入
会金が九千円かかりましたが。H
Dの容量は一〇メガの契約です
が、今のところそれで充分です。あ
とは電話代ですか。本当に安いも
のだと思いますよ。だからこそ今
後も一般に普及してゆくでしょう
し、当社としても、このメディアを
活かしていきたいと思うわけで
す。
――ありがとうございました。 |