きもの流通新聞 1997.08.25
インターネットの急速な普及背景に
着実に拡がるきもののホームページ
米沢・鈴源織物
きものへの関心高めるため
「きものへの思い」をネット上に
米沢のメーカー鈴源織物
のホームページ開設は、一
九九五年の十月二十日と比
較的古く、八月二十日現在
でトップページアクセス数
が一万二千件台にまで達し
ている。
その内容は、「挨拶」から
始まり、「ニュース」「今月の
SELECTION」「きもの
NETWORK」「きもの
フォーラム」「米沢・山形情
報」「HOW TOきもの」「男
のきもの」「女のきもの」「友
禅オーダーメイド」「オリジ
ナル小物」「注文方法」と多岐
に渡っている。
開設の着想として、「きも
のを着る機会が少ない昨
今、きものの基礎的な情報
を発信することによって少
しでもきものに接する機会
を増やし、底辺の拡大につ
ながれば」という思いを持
つ。
八月現在で全国から一万
二千件あまりのアクセスが
あるが、その内訳は業界・
呉服店関係者はもちろんの
こと、一般からの問い合わ
せも数多くあり、「ホーム
ページを見
て、きものに
興味を持っ
た。商品に興
味を持った」
として、実際
に同社の工場
見学をしに
来、きものが
できるまでの
工程を理解し
て帰る客もい
るほどという。
関西の大学教授からの問
い合わせでは、自治体の「町
起し」のコンサルティングを
進める上で、廃れゆく織物
を何とか復興・復活するこ
とで役立てたいが、知恵を
貸してくれないか。という
問い合わせもあった。
また「イングリッシュペー
ジ」も設けられており、日本
文化の諸外国への紹介にも
一役買っている。
ホームページを開設する
ことにより、速効性のある
商売手段としてではなく、
ユーザーにじっくりときも
のを理解してもらう、その
狙いで開設されていると
いっていい。
インターネット上にリン
クを張り、それを即商売に
結びつけていけるかどうか
の点について、同社で開発
から運営まで関わってきた
長根氏は次のように話して
いる。
「呉服という商品の特性か
らいって、オンラインで買
い物ができるかといえば、
いくつかの障害があって難
しいことは確かなこと。呉
服の色目は、いくら画面モ
ニターの性能が上がっても
実際の色を表現しきれるか
疑問であるし、ましてや織
り味は画面上では表現でき
ない」と指摘する。
実際に、インターネット
上で物産の取り引きが成立
している商品は、酒・そ
ば・肉といった食品類が多
く、金額的にも五千円程
度「はずれてもたかが知れ
ている商品」が大半というの
が現状であるという。
「米沢織で、男の袴の生産
量が全国で九割を占めてい
ることを知っている人は少
ないのです。PRすること
により、鈴源のポリシーや
商品に対する思い入れ、気
持ちなど『メンタルな部分』
をどう表現し、どう伝達す
るか、そこにネットを張る
ことの意義がある」と長根
氏。
具体的な内容を見ると、
同社の姿勢がよく現れてい
る箇所が多々ある。
「きものフォーラム」に
は、「きものsalon」と「きも
のcollaboration」という内
容の情報が流れている。き
ものサロンはきもの好きの
皆さまのコーナーという意味
から、きものへの想い、こ
だわり、着こなしのポイン
トなど、自由に方ってもら
うコーナー。
これに対して『共創』とい
う意味を持つコラボレー
ションでは、きもの・和装
関連業界(呉服店・問屋・織
元・染元・糸業他の方々の
ためのコミュニケーション
の場として、日本伝統の服
飾文化「きもの」の振興とい
う大きな共通目標の下、そ
れぞれの立場からの知恵の
交流を通じて新たな価値を
共に創造していく場とした
い、としている。
また「きものネットワー
ク」では、同社の取り引き如
何に関係なく、インター
ネット上にホームページを
有しているユーザーはもち
ろんの事、これからネット
を張ろうという新規ユー
ザーにも解放されている。
インターネットの可能性
について長根氏は、「きもの
の画面上での売買は難しい
が、地域の呉服店がどこに
あるのか、どの様な商品
を置きどのような心構えで
販売しているのか、基礎的
な情報を流していくという
ことが大切ではないか。ま
たそのような情報こそが、
本当に消費者が求めている
ことではないか」として、今
後さらにインターネットが
普及していく前提が、「発信
する環境が今以上に容易に
なることと、素人がワープ
ロで文章を打ち、それがそ
のままネットに乗るように
なれば」、可能性は高くなる
とする。
現状のアクセスは一般で
は男性が中心であり、女性
の中年がネット検索をする
可能性は低いが、誰でも気
軽にといった環境が整備さ
れていけば、「きものの持つ
『語り』を紹介していくツー
ルとしての活用度は高まっ
ていくのではないか」、その
意味で「すべての企業はイン
ターネット上でのホーム
ページを持つべきではない
か」と話していた。 |