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王位皇位の世襲方法は大別して2つに分類することが出来ます。
一つは欧州の王室で一般的な「直系継承」で、もう一つは日本、ヨルダン・
ハシェミット王国等の「系統継承」です。
「直系継承」は更に、直系子孫(兄弟姉妹等)の中での優先順位により、
長子(姉)より男子(弟)が優先される「直系継承(男子優先)」と、長
子(兄)より女子(妹)が優先される「直系継承(女子優先)」、男女の
区別なく長子が優先される「直系継承(長子優先)」に分類できます。
「系統継承」は更に、系統の起点の捉え方により男系(父系)による「系
統継承(男系)」と女系(母系)による「系統継承(女系)」に分類でき
ます。
◆1「直系継承」
・1−A「直系継承(男子優先)」
・1−B「直系継承(女子優先)」
・1−C「直系継承(長子優先)」
◆2「系統継承」
・2−A「系統継承(男系)」
・2−B「系統継承(女系)」
日本の皇位継承は2−Aの「系統継承(男系)」となります。
「万世一系」は、一つの系統による継承を“万世”という形で連続性の面
において強調した言葉であり、「系統継承」の修飾表現(=同義語)とな
ります。
歴代、女王とその娘という母系(女系)の系統で継承してきた王位継承に
関して、“女系による「万世一系」”と表現することも有り得る訳です。
今回、政府、有識者会議が進めている「女性・女系天皇容認、長子優先」
という案は、「女系」という言葉遣いが紛らわしいですが、2−B「系統
継承(女系)」という意味ではなく、非常に単純に欧州王室一般の世襲方
法と同様の「直系継承」に変えようというものであり、その中で1−C
「直系継承(長子優先)」にしようというものです。
「男系」か「女系」かの対比ではなく、「系統継承(男系)」か「直系継
承」かの対比こそが問題の本質的な捉え方になります。
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「系統継承」は、王室皇室自身の姿勢においても、国民の側においても、
世代感覚という面で非常に“自己抑制的な世襲方法”となりますので、長
年に渡って継続することが難しく、しばしば途中から「直系継承」に移行
することが起こります。
今回の様な議論は、「系統継承」においては“ありきたりの”“良くある
パターンの”“想定内の”議論であり、“系統継承の難しさ、直系の誘惑”
という意味で教科書に載る様な典型的な議論になります。
過去において日本は、直系男子不在の都度こうした議論を乗り越えて「系
統継承」を守り、実に125代にも渡って続けてきた歴史があり、他国の
王室との違い、独自性という面で非常に際立った特徴となります。
王位皇位の世襲に詳しい人ほど、絶対性をもつ王皇の凛とした強い自己抑
制によって成り立つ「系統継承」の重み、価値を理解し、それ故に日本、
皇室に深い敬意を示している状況があります。
仁によって治める「仁治」、徳によって治める「徳治」、君民が一体と
なって治める「君民共治」など、日本の国の体制、社会秩序のあり方、
和の心、和の価値観のあり方は、天皇のあり方、皇位継承のあり方と相
まって育まれてきたものであり、「系統継承」こそがその鍵になります。
始祖を重んじ、先祖伝来の蓄積を重んずる継承方法。
世代を預かる意識、仁、無私の心によって支えられてきた継承方法。
「系統継承」と日本、和の心に関して、詳しくは、以下の論文をご参照
いただきたく。
■「和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本」 |
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