長根英樹 ネットクラブ
皇位継承と和の心
― 万世一系と君民共治 ―
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No.3 男系/女系、父系/母系、神武父系/神武系統外(皇統外) 長根 英樹 さん 
    2005.10.14 12:57:25 返信

 


加筆訂正のご案内

日本の伝統的な皇位継承のあり方=「万世一系」と、その基本原則である
「男系継承」の説明において、言葉の足りない面があって誤解を招いたり
本質を外れた議論へとミスリードをしてはいけないと思いまして加筆修正
をいたしました。

皇統における男系(男系への所属)とは、父、またその父…と父を遡って
いくと初代天皇の神武天皇に行き着くという非常に単純明快なものです。
しかしながら、万世一系はそう単純なものではなく、男系であればそれで
よいというものではありません。
(万世一系≒男系 万世一系≠男系)
この点で非常に誤解が多い様に見受けます。

皇位継承者の男系(神武系統:皇系統、皇統)への所属は、万世一系にお
ける原則ではありますが、いわば必要条件であってその他にも十分条件が
満たされなければなりません。
父を遡って天皇に行き着く、天皇と同じY染色体を引き継ぐという男系の
系統(皇系統、皇統)に所属している子孫は、現代でも数多く存在します。

和の国の最高の仁者の立場にふさわしい公明正大な継承こそが重要であり、
和の心に基づき和の心を高めてきたのが天皇、皇位継承のあり方であると
思います。
男系という必要条件の他に十分条件も含めた形で総合的に万世一系、伝統
的な皇位継承に込められた文化的な意味を捉え、その心を現代に引き継い
でいくことが重要と考えます。

【参考】
  No.67 直系独占の“女性”天皇こそが伝統破壊

  No.80 文化論としての皇位継承論議を



 

現在、皇位継承の問題を論ずるにあたって、皇位の移り代わり
の流れを示す言葉として、「男系、女系」という表現が使われ
ています。

(ここでは一般にも分かりやすく説明する意味合いから、皇族
 方の表記に関して、宮号や敬称の面で簡易的な表現を用いて
 おります点、ご了承ください。)


例えば、
今上陛下→皇太子殿下→秋篠宮殿下→ の流れで、眞子内親王
殿下が皇位を継ぎ女性天皇になられた場合、女性天皇の眞子様
は「男系女子」(男系天皇)だが、眞子様が民間一般の男性と
ご結婚をされお子様が生まれたとすれば、そのお子様は「女系」
(男子の場合は「女系男子」、女子の場合は「女系女子」)
となり、もしこのお子様が皇位を継ぐことになれば歴史上初の
「女系天皇」となって、従来一貫して「男系」により継承され
てきた万世一系の原則、伝統が崩れることになる。
といった表現です。

私は、上記表現の言わんとするところと同じ捉え方をしており、
いわゆる「女系天皇」には反対の立場です。

しかし、この「男系、女系」という表現は分かりづらく、また
正確でなく、無用な誤解を招く表現であると思います。

              ◇

皇位継承における「男系」とは、非常に単純明快で分かりやすい
系統の捉え方です。
すなわち、天皇→父→父→父→ … →父→父→父→神武天皇
という形で、歴代天皇の父、その父(祖父)、そのまた父(曾
祖父)とどんどん父親を遡って行くと、必ず初代の神武天皇に
行き着くという捉え方です。



こうした継承を「男系」による継承と言っている訳ですが、継
承の起源を明確にする意味では、「父系」で繋がる継承という
ように、「父系」という表現を用いた方が分かりやすいと思い
ます。

これに対して、
子→母→母→母→ … →母→母→母→母
というように、母親を遡って起源を辿る捉え方が、本来的な意
味での「女系」「母系」の継承となります。

まとめると
・父と子の関係に着目して歴代の流れを捉えるのが父系(男系)
 による系統であり、父系継承
・母と子の関係に着目して歴代の流れを捉えるのが母系(女系)
 による系統であり、母系継承
となります。


人は誰しも皆、父(男)と母(女)から生まれてきますので、
全ての人が、父→父→… と繋がる父系(男系)の系統(男性
なら父系男子、女性なら父系女子)に属し、また同時に母→母
→… と繋がる母系(女系)の系統(男性なら母系男子、女性
なら母系女子)に属しています。
(全ての男性が「男系男子」「父系男子」であり、どの系統に
 属する「男系男子」なのかがポイントとなります。)

そして、男性は父にはなれますが母にはなれませんので、父系
(男系)の系統を子孫に繋げ残すことは出来ますが、母系(女
系)の系統を子孫に繋げ残すことは出来ません。
また、女性は母にはなれますが父にはなれませんので、母系
(女系)の系統を子孫に繋げ残すことは出来ますが、父系(男
系)の系統を子孫に繋げ残すことは出来ません。

              ◇

現在、女性天皇と民間一般男性との間に生まれたお子様の即位
について「女系天皇」という表現をしている訳ですが、先程の
眞子様の例で女系=母系(母親)を遡って考えてみると、
お子様(女系天皇)→母(眞子様:男系天皇)→母(紀子様)
→母(川嶋和代様:紀子様のお母様)→母(紀子様の母方の
お祖母様)→
となり、この系統は歴代天皇の系統に繋がりません。
(いわゆる「女系天皇」は、母親である天皇と母子間の繋がり
 はあるが、系統での神武天皇との繋がりはない。)

上記の眞子様を例にした想定でも明らかなように、現在の議論
では、女性天皇とお子様との間の単に一代のみの母子間相続を、
あたかも系統として歴代天皇との繋がりがあるかの様な雰囲気
を醸して「系」の文字をつけて表現しています。
また、それを「母系」ではなく「女系」と表現することで、
「男系」「女系」の対比から、男女性差の問題とシンクロさせ
錯誤を助長させている面がある様に思います。


ここであらためて論点、皇位継承の流れを明確にする意味で、
従来の「男系」を「父系」と置き換え、更に神武天皇に繋がる
父系の系統であることを明確にする意味で「神武父系」と表現
したいと思います。
すると、従来表現の男系男子による継承は、神武父系の男子に
よる継承となります。
歴代の女性天皇は神武父系の女子(男系女子)で、皇位は一貫
して神武父系(男系)により継承されてきました。

皇統とはまさしくこの神武父系に属した系統であり、万世一系
においては一貫して神武父系による継承が行われてきました。


これに対して、いわゆる「女系天皇」は、母親を遡った「女系」
「母系」の“系統”で神武天皇に繋がらず、もちろんのこと父
方の「父系」でも神武天皇に繋がりません。

系統として歴代天皇と繋がらないのに、「女系」や「双系」と
いった表現をするのはふさわしくない様に思います。

こうした考えは、皇位を系統という歴史的な繋がり(長期視点)
で捉えることなく、時の天皇とその子との形で非常に狭い視点
(一組の親子関係だけ)で捉える浅はかな解釈が根底となった
考え方になると思います。
時々の都合により、今回は母子間相続、次は父子間相続と不規
則な継承を繰り返し、結果として父系とも言えず母系とも言え
ない、系統としての繋がりのない関係性を歴代の天皇間に生じ
させていくことになります。

皇位は、初代神武天皇からの万世一系による系統の重い積み重
ねに由来するものであり、時の天皇個人に属するものではなく、
時の天皇がその世代の都合で自由に私出来るものでもありませ
ん。
こうした皇位の源泉に関する基本認識の欠如が、「女系」「双
系」などという継承論や造語に繋がっているものと思います。


今後、伝統を尊重し万世一系を守る立場から議論する場合には、
情報リテラシーの観点から、
・「男系」か「女系」か ではなく、
・「神武父系」(皇系統、皇統)か「非神武系統」(非皇系統、
  非皇統:神武天皇に遡る天皇の系統に繋がらない別系統)か
といった対比表現を用いていくことが重要と考えます。

例えば、
今上陛下→皇太子殿下→秋篠宮殿下→ の流れで、眞子内親王
殿下が皇位を継ぎ女性天皇になられた場合、女性天皇の眞子様
は「神武父系女子」(神武父系天皇)だが、眞子様が民間一般
の男性とご結婚をされお子様が生まれたとすれば、そのお子様
は「非神武系統」(非皇系統で歴代天皇との系統的な繋がりの
ない別系統の子孫)となり、もしこのお子様が皇位を継ぐこと
になれば歴史上初の「非神武系統天皇」(非皇系統天皇、別系
統天皇→そもそも天皇と呼べるものか論理矛盾の存在ですね)
となって、従来一貫して「神武父系」によって継承されてきた
万世一系の原則、伝統が崩れることになる。
といった表現です。

              ◇

ここで、神武父系の系統と皇統との関係について。

「皇統」という表現は、広義、狭義、様々な意味合いで幅広く
使われていますが、ここでは神武父系の系統の中で、君臣の別
を踏まえ皇族であった方々を(配偶者も含めて)示す意味合い
で用いたいと思います。
(「歴代の皇族方の系譜」という意味合いです。)

系統は誰(どの世代)に着目するかによって子孫の広がりが異
なってきますが、先代に遡れば遡るほど枝分かれ、子孫の広が
りが大きくなります。

皇位は神武父系により継承されるということが絶対不変の大原
則ですが、神武父系の系統は過去に臣籍降下した枝分かれ系統
もあり非常に幅広い、大人数となる系統になります。

よってこの系統の中から、歴代の天皇との繋がり(君臣の別)
を考慮して皇統が(配偶者を含む形で)定められています。
(配偶者を含めた)集合の包含関係で言えば、「神武父系⊃皇
統」となります。


「皇統に属する男系男子」という表現は、本来
・神武父系男子(男系男子)は対象者の範囲が非常に広く、皇
 統に属さない者もいるので、神武父系男子(男系男子)の中
 で皇統に属する者
 (皇統に属する 男系男子 と
  皇統に属さない男系男子 の対比表現)
との意味合いであり、
・皇統には男系の他に女系もあるが、その中で男系の方の男子
 「皇統⊃男系(神武父系)」
 (皇統に属する男系男子 と
  皇統に属する女系男子 の対比表現)
という意味で捉えるのは曲解であると考えます。

系統の意味合い、父親を遡っていけば神武天皇にたどり着くと
いう神武父系、万世一系の意味合いを理解していれば、上記の
ような解釈は出て来ないものと思います。

              ◇

皇統、即ち皇族の範囲は、皇族方にどれだけ男子が誕生するか
によっても変動する比較的緩やかなもので、一旦臣籍に降下し
ても皇統、皇族に復帰した例もあります。
時代、状況に応じて、天皇、皇室を補佐し、皇位の継承を万全
たるものにするために、神武父系の中から適宜範囲を決めてい
くことが出来るものと考えます。

そして今はまさに、あらためて皇統の範囲を設定し直すことが
求められる時代、状況にあるものと思います。


万世一系の継承原理は、直系最優先(時の天皇の子孫であれば
男子のみならず女子の即位も可)の継承に比べて、時に天皇の
子よりも他家(兄弟や叔父、甥等)が優先される場合があると
いう順位付けの考え方により兄弟間の繋がり、世代間(叔父、
甥等)の繋がりや助け合いの心を強める作用が働くという特徴
があると思います。
皇位を私物と捉えず、親族全体で協力して大道を歩んでいこう
とする理念、和の心が込められた継承方法であると思います。

これに対して、現在想定されている女性天皇や女系天皇(非神
武系統天皇)は、基本的に自分の家族(直系)を第一優先にし
た考えが根底となり、皇位の私物化にも繋がる要素をはらんで
いるものと考えます。
仮に皇位“継承”の安定性が高まったとしても、皇位そのもの
の安定性、信頼性、正統性が損なわれるようなことでは本末転
倒になります。

長きに渡って続けられてきた伝統、しきたりに込められた意味、
その真髄を理解し、物事の優先順位を見極めることが重要であ
り、それこそが“有識者”に求められる資質であろうと考えま
す。

   


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   :2005年10月 7日   更 :2005年10月 7日