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― 天皇の子供が天皇になって、なぜいけない? ―
系統継承と直系継承
本日、― 政府、有識者会議が「女系」の皇位継承を認める方向で最終報告書
の取りまとめを進める方針 ― との報道がなされました。
憲法が定める「皇位の世襲」は“男性”に限ったものではないという説明を
盛り込むことで、「女系」の皇位継承について国民の多くの理解を得たいと
しているとのこと。
※確かに、憲法では「(男系)男子」にまで限定せず、緊急時における
「(男系)女子」の即位の余地を残していますが、これが「男系」
(系統継承)以外の継承、世襲を認める文言であると解釈することに
は大きな無理がある様に思います。
こうした政府、有識者会議の側と、伝統を尊重し男系継承を守るべきとする
側の議論は、終始かみ合わないままに進んできた様に思います。
今、メディアやネットでは“「女性天皇」と「女系天皇」の違い”をテーマ
にした企画や言論などを見かけます。
しかしこうした説明は、「過去にも女性天皇がいた」という論拠への反論に
はなりますが、「天皇の子供が天皇になって、なぜいけない?」という素朴
な疑問への解答にはなっていません。
この「天皇の子供が天皇になって、なぜいけない?」
「天皇の子が天皇になれないのはおかしい」
という点こそが、今回の女性・女系天皇容認論の本質であると思います。
この様な考えから、継承順位2位の秋篠宮殿下よりも上位に敬宮殿下(愛子
様)を位置づける様な議論が生まれてきているものと思います。
例え秋篠宮家に男子がいても、あるいは今後秋篠宮家に男子が生まれても、
皇太子殿下が即位して天皇となられた後は、秋篠宮殿下や秋篠宮家の男子で
はなく、天皇の子供である敬宮殿下が継ぐのが当然と考えているものと思い
ます。
こうした発想、論拠が背景となっているため、(継承順位に変化がないうち
にと)こんなにも先を急いだ強引な進め方をして、「分かりやすい」という
キーワードのもとに、女性天皇だけでなく女系の天皇も容認し、更に男子優
先でなく長子優先の議論も出てきているものと思います。
しかし、いわゆる男系派、伝統尊重派からは、依然として「過去にも女性天
皇がいた」という論拠への反論としての
「女性天皇はいたが、女系の天皇は未だかつて存在しない」
「男系での継承こそが伝統」
「長く続く伝統だから守るべき」
「愛子様の即位(女性天皇)は問題ないが、そのお子様は女系となり問題」
などの主張がなされ、議論がかみ合わない状況になっている様に見受けます。
今、男系派、伝統尊重派が説明すべきこと、また男系派、伝統尊重派に問う
べきこと、メディアとして解説すべきことは、この
「天皇の子供が天皇になって、なぜいけない?」
「天皇の子が天皇になれないのはおかしい」
という論点への答えであると思います。
◇
なぜ、「天皇の子が天皇になれないのか」
「天皇の子を天皇にすることをしなかったのか」
この訳、文化的な意味を説明すること。
なぜ皇太子殿下の後が敬宮殿下ではなく、秋篠宮殿下なのかを説明すること。
すなわち、なぜ「直系継承」ではなく「系統継承」なのか。
今回の「女性・女系天皇論」は非常に単純で、欧州王室で一般的な「直系継
承」方式に変えようということです。
「女性・女系天皇論」に対しては様々な観点から反論がなされていますが、
(・別系統に移り王朝交替になる。
・皇位の簒奪、乗っ取り、外部からの影響行使に繋がる。
・先祖、子孫の概念がねずみ算的に拡散する。
・ローマ法王、英国国王と並ぶ3大権威、世界的な地位が低下する。
などなど)
制度論それ自体としては既に欧州諸国での実績がある方法ですので、こうし
た観点からの反論や海外の評価を基準にする他律的な論証では説得力を得な
い様に思います。
(例えるなら「将棋」も「チェス」もそれぞれにルールとして破綻なく確立
されており、ルール自体が問題なのではなく、ルールの背景にある文化、
精神性の面で、受け止め方に違いがあるという感じです。)
これに対して、日本の皇室における伝統的な男系継承、万世一系は「系統継
承」となります。
(「系統継承」は、初代が男性か女性かによって、男系男子を基本とする男
系継承と、女系女子を基本とする女系継承の2種類があります。
「男系継承」vs「女性・女系天皇」という現在の構図は、ゆがめられた対
比の構図であり、本質は「直系継承」か「系統継承」かにあると思います。)
そもそも「系統継承」と「直系継承」の違いとは。
「系統継承」の文化的な意味、日本の文化、和の心と「系統継承」との関連
について。
こうした「系統継承」の伝統に込められた文化的な価値こそが、皇位継承問
題、今後の国のあり方に関する本質的な議論に結びつくものと考えます。
◇
「系統継承」は、
・先祖、初代からの積み重ねを強く意識する継承方法
・和の心、互助の精神を基礎とする継承方法
・仁、無私の心を基礎とする自己抑制的な凛とした美学、精神に基づく
継承方法
・皇室と国民との関係性に「連続性」を与え、長期的な関係性、強固な
関係性をつくっていく継承方法
になると思います。
一方、「直系継承」は、
・覇道的、単世代的、ドライ、契約社会的な継承方法
であり、従来の日本的な価値観、和の心にそぐわない継承方法となり、皇
室の安定性、皇室と国民との関係性を損なうことに繋がると思います。
詳しくは、和の心と皇位継承の関係に関する論文をご参照いただきたく。
「和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本」
http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/27_title_msg.html
欧州一般の「直系継承」と日本の「系統継承」の違い、その文化的な意味
合いについての解説は、今後の議論において非常に意義深い問題提起にな
るものと考えます。
各メディアには、こうした観点から皇位継承問題に関して解説する特集、
特番を提案したいと思います。
また、男系派、伝統尊重派のみなさんにも、こうした観点からの掘り下げ、
議論を呼びかけたいと思います。 |
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