長根英樹 メッセージ
 ― 論文&マスメディア掲載 ― 

万世一系と和の原点回帰
 

「万世一系と和の原点回帰」              2006.10.28


今般のご慶事、皇室における新たな生命の誕生、秋篠宮家の悠仁親王殿下の
ご誕生を心よりお祝い申し上げます。
新世代の皇位継承者(継承順3位)のご誕生により、皇室の行方に一筋の光
が射し込み、皇統の未来が明るく照らし出された様に感じるところです。
同時に、あらためて古代からの歴史の繋がり、ご先祖様からの想いの伝承、
和の心の積み重ねによる日本の国の伝統の尊さと強さ、揺らぎのなさ、目に
見えぬ天の道理を実感し、先人とお天道様への感謝の念を強くした次第です。
大変お目出度く有り難いことと存じます。

                 ◇

さて、皇位継承や皇室典範改正等に関する議論についてですが、「喉元過ぎ
れば熱さ忘れる」とばかりに、今までの危機の本質を顧みることなく、親王
殿下のご誕生により問題は解決済みといった錯覚、幻想により関心を失い、
面倒なことはまた今度、なんとかなるという安易な先送りの気配、世のムー
ドが広まりつつある現状に少々危惧を感じているところです。

新世代の継承者、お世継ぎのご誕生はありましたが、昨年来の議論は本質的
には進んでいません。
いわゆる男系派(一系、系統派)と女性・女系容認派(直系派)双方の議論
は収束しておらず、結論や世の合意は得られていません。
男系派(一系、系統派)、伝統派は、議論によって直系派=(男系に加えて)
女性・女系容認派を説得し納得を得た訳ではなく、世論調査においても依然
として女性・女系容認=直系(親子相続)主義が高い割合で存在しており、
国民の総意に基づくという天皇の地位にふさわしい形で世論の幅広い合意が
形成されている状況にはありません。

昨年、小泉前首相の私的諮問機関として「皇室典範に関する有識者会議」が
正式に発足して以来の動き、論議を、単なる継承問題、お世継ぎ問題として
捉えるのは誤りであると思います。
天皇の天皇たるゆえんを定める皇位継承のあり方は、天皇のあり方そのもの
に直結する問題となりますので、本来、天皇論、天皇と日本論、日本文明論、
和文化・和の心論として捉えるべきであり、現在の問題、将来の問題として
の国のあり方、“和の国としての日本のあり方”こそが問われている本質で
あると考えます。

現在の日本社会の問題、国のあり方としての問題、すなわち勝ち組負け組の
格差社会の問題、格差固定・長期化の格差助長の問題、拝金主義、経済至上
主義、職業倫理の崩壊、社会のモラルや公徳心の崩壊、国歌・君が代問題、
国内問題としての靖国問題、また隣国との和のあり方に関する問題、世界的
な平和、相互尊重における日本文明の役割などなど。
こうしたテーマに通じる問題として認識し捉えるべきであると考えます。

その意味で、皇統の未来を照らす存在の親王殿下がご誕生した現在であって
も、単なる皇位継承、皇室典範等改正(旧皇族の復帰等による宮家の拡大や
皇室予算、税金面)といった枠組みの議論ではなく、天皇論、日本論として
万世一系の伝統を見つめ直し、広く憲法も含めた形で国民的な議論を進めて
いくことが重要と考えるところです。

                 ◇

そもそも「万世一系」の皇位継承方法には、時に長期的な視点に立ち返って
日本のあり方、和の心を見つめ直す「和の原点回帰」の仕組みが込められて
います。

人間、社会は、ある種エゴイスティックな自分本位の面を持っており、自分
中心の短期的な視点が強くなると社会が大きく乱れることとなります。
社会運営、政治の立場では、いかに人々の視点、社会の視点を長期的な方向
へと向けていくかが課題となります。

大胆な傍系継承と直系優先(親子相続主義)でない点が日本の皇位継承方法、
万世一系の大きな特徴となりますが、皇位の継承が、親から子孫、また親か
ら子孫へと何代も直系で続くとき、皇位が相続物、時の天皇一家の既得権で
あるがごとくの錯覚が社会に生じてきます。
こうした感覚は、時代感覚をゆがめ、社会の視点を短期的な方向へと誘惑し
ていくことにもなります。

特に現在は、119代の光格天皇以来227年、直系(親子継承)で7代、
8代続くという状況であり、皇統の歴史においても最長の部類で希な状態と
なります。
(神話から連なる初代神武天皇から13代の成務天皇までが最長となります
 が、これを除くと、102代の後花園天皇から109代の明正天皇までの
 215年を越えて最長となります。)
直系の誘惑、皇位私物化の誘惑、近視眼化の誘惑という意味では、究極の誘
惑ともいえる状態が今の状況となります。

本来、こうした中で、皇位継承者たる皇子皇孫が生まれない、何代も直系で
は繋がらないという自然の摂理、人智を越えた天の思し召しを受けて、仮に
天皇に女子がいても、その子を越えて傍系(他家)の男子に継承させるのが
万世一系の継承となります。
この傍系移行によって、皇位の由来が時の天皇にではなく、初代天皇以来の
先祖伝来の蓄積の重みにあることが確認されます。
また、皇位を既得権と捉えて私物化することなく、無私の心、仁によって連
綿と繋いできた歴代の天皇と民に想いをいたし、先人の尊い積み重ねによる
歴史を振り返る中で、長期的な視点、世代を預かる意識を取り戻すことが出
来るのです。
こうして、和文化、和の心を再確認し、新たな形で和の国のあり方を捉え直
して大きな改革を行うという「和の原点回帰」が図られることとなります。

                 ◇

今こそが、万世一系の伝統に込められた「和の原点回帰」の仕組みを働かせ
新たな国づくり行うを天与の時機であり、秋篠宮妃殿下のご懐妊、悠仁親王
殿下のご誕生により与えられた猶予を活かし、国民的な議論を展開していく
ことが重要と考えます。

皇位継承のあり方、万世一系の理由と意味について、単に伝統だから、長く
続いてきたからというだけでなく、またY染色体など生物学的な説明に頼る
ことなく、日本の国のあり方、和文化、和の心とどの様に関連し、現在の社
会、将来の日本にどう関わってくるのかという観点から、社会文化論、政治
文化論として議論を深めていくことが重要と考えます。

                 ◇

あらためて、政治、政治家の役割に期待をしたいと思います。
小手先の議論ではなく、国の将来を見据えた構想力と感化力により、和の心
のあり方、和の国のあり方に関する温故知新、国民的な議論をリードしてい
くことが求められているものと思います。

現在の動きの中では、旧皇族の皇籍復帰をテーマとした取り組みが目立つ様
に思います。
最初から「復帰ありき」で法律論などテクニカルな議論を進めることは、か
えって復帰を困難にすることにもなりかねません。
まずは、枝葉の議論ではなく大きな議論、伝統的な皇位継承のあり方、万世
一系の「意味論」をしっかりと行うことが重要と考えます。
そして優先順位を明確にした上で、復帰論など具体的な議論を進めていくこ
とが必要と思います。

私は伝統を尊重し、万世一系を守っていく立場ですが、今後の皇位継承論議
における優先順位としては、まず妃殿下のご懐妊、親王殿下のご誕生を一義
とする姿勢、あり方が重要と考えています。
こうした順序をしっかりと踏まえた上で復帰論を語るのでなければ、復帰に
関して無用な誤解や邪推、混乱を助長することになります。

特に、今回のご出産に関して、陛下から異例のお言葉がありました。

― 2006年9月6日 天皇皇后両陛下のご感想全文 ―
「秋篠宮より、無事出産の報せをを受け、母子ともに元気であることを知り、
 安堵しました。
 様々な心労を重ねた十ヶ月であったと思いますが、秋篠宮夫妻が、その全
 てを静かに耐え、この日を迎えたことを喜び、心からのお祝いの気持ちを
 伝えたく思います。
 二人の内親王も、この困難な時期を、一生懸命両親に協力して過ごしてき
 ましたので、今は、さぞ安心し、喜んでいることと思います。
 医療関係者を始め、出産に携わった人々の労をねぎらい、この度の秋篠宮
 家の慶事に心を寄せ、安産を祈願された内外の多くの人々に、深く感謝の
 意を表します」

皇室におけるご出産、新たな継承者の誕生の可能性もあるご出産に関して、
当事者であるご夫妻が、十ヶ月間、妊娠初期からご出産に至るまでの期間を
通じて、様々な心労を重ねそれに耐え続けてきたという陛下のお言葉です。
また、「その全てに静かに耐え」と内部要因的な心労(前置胎盤の不安など)
ではなく、外部要因としての心労に言及された点、ご夫妻だけでなくお子様
までもがこの困難を両親と協力しあって乗り越えたとのお話。
妃殿下のご懐妊、ご出産を受けとめる世のあり方として、非常に重い意味の
込められたお言葉であり、この陛下のお言葉を受け、政治家としてなんらの
思いをいたさない、この現状に責任を感じないとするならば、日本の政治家
とは言えない、そう断言できる程の重み、深い意味合いを持つお言葉として
受けとめた次第です。

真に伝統を尊重する保守派の立場に立つのならば、次なるご慶事、妃殿下の
ご懐妊を静かに心待ちにする国民的なムードを醸成する役割を果たし、二度
とこの様なお言葉が重ねられることのない様に、殿下方をバックアップする
ことが重要と考えます。
皇統は、君民双方、先人の尊い営みの積み重ねによって保たれてきたもので、
皇統を守っていくことは、ご先祖様からこうした宝を受け継ぐ現世に生きる
者の使命と考えます。

万世一系による皇統を守り、皇統によって保たれてきた和の心を取り戻し、
新たな和の国づくりを行うことこそが、保守派、尊皇派の役割であると考え
ます。

                                以上






※ 万世一系、皇位継承と和の心に関しては、以下のネット書籍に詳しく
  考えをまとめています。是非ご一読いただきたく。

ネット書籍「皇位継承と和の心 ― 天皇の子が天皇とならない理由」
 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/mess/book001/



【参考】

「和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本」 2005.02.18 
 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/27_title_msg.html

「朝日新聞」三者三論 〜 女性天皇どう考える・現制度の方が皇室安定 2005.10.28
 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/28_title_msg.html

「日本国憲法と武士道精神」 〜 和の心による国づくり 2004.01.06
 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/26_title_msg.html

掲示板 「皇位継承と和の心」
 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/mess/nippon/


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長根 英樹 ながね ひでき


きもの和文化プロデューサー。
小沢一郎政治塾一期生(2002年卒)。
山形県米沢市在住。
1966年5月2日 岩手県生まれ。
岩手県立水沢高等学校理数科卒業。
慶應義塾大学理工学部卒業。
(株)電通パブリックリレーションズ入社。
主に企画部署で企業/自治体の広報戦略やインターネットコッミュニ
ケーションを研究実践。
山形出張が縁で米沢織の魅力に惹かれ、織元に入社。きものの世界へ。

現在は、「スロークロージング」「衣育」の提唱等きもののプロデュースと
地域再生、日本の精神文化再興など、幅広い視点からきもの心の見つめ直し
和文化プロデュースに取り組む。
ホームページアドレス http:// nagane.kimono.gr.jp/

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