長根英樹 メッセージ
 ― 論文&マスメディア掲載 ― 

「岩手日報」2007.05.24
  日報論壇 〜 和の心に基づいて
 

和の心に基づいて       長根 英樹     2007.5.24


 憲法施行六十年の節目の今、歴史や伝統をキーワードとしたいわゆる保
守色の強い憲法論議、政治論議が盛んです。天皇を元首とし、皇位継承は
男系男子、九条を改正し集団的自衛権を容認、防衛軍を創設、靖国問題な
どです。
 国の歴史や伝統を見つめ直す中から、今と将来のあり方を探っていく姿
勢には賛同しますが、その際に重要となるのは一貫した価値観や精神性で
す。徹底した和の心の掘り起こし、和の心に基づいた温故知新こそが求め
られるものと考えます。
 和の心と天皇・万世一系・皇位継承、和の心と靖国問題、和の心と武士
道精神、和の心と九条・平和主義・世界文明共存、和の心と格差社会・自
由競争主義など。
 憲法は国の価値観や精神性、心に基づいてつくられ、改められ、発展し
ていくべきものと思います。その意味で、憲法を論ずるにあたっては、和
の心を論じ、その理解を深めていくことこそが重要です。こうした議論に
立ち返ることで憲法のあり方もおのずと定まってくるものと思います。

 私は、和の心の大きな特徴として「世代を預かる意識」があげられるも
のと考えます。長期的な視点で物事を考え、開明的な利益のとらえ方をす
る点です。
 天皇、皇位継承のあり方は、まさにその粋と言えます。直近の親子の関
係を一義に王位をとらえる欧州一般の直系継承方式と異なり、悠久の歴史、
時間軸を意識し、時の天皇といえども特別視することなく、天皇に実子が
いても初代天皇からの関係性にかんがみてあえて傍系に移すという形で受
け継がれてきたのが万世一系の皇位となります。
 保守の立場に立つのならば、いま一度こうした和の心の真髄に基づいて、
近しい特定の先祖のみを英霊ととらえ奉じる現在の靖国参拝のあり方が、
当のご先祖さま方の意志にかなうものなのかを深慮する必要があるものと
思います。

 長期的視点に立つことで、歴史や先祖の思いの積み重ねからなる文化文
明を貴重な宝ととらえ、また他者の文化文明をも重んじ、それを守ろうと
する使命感に共感を寄せる「互尊共歩」の超調和主義、世界文明共存の道
が開かれます。
 和の心は人と人とのつながりを重んじ、「世界がぜんたい幸福にならな
いうちは個人の幸福はあり得ない」と社会全体で豊かさを高めていこうと
する価値観をはぐくんできたものと思います。
 「一隅を照らすものは国の宝なり」と、一人一人がそれぞれの立場役割
で存在意義を実感できる世こそが幸せで豊かな世の中であるという社会の
幸せ観は、現在の格差や引きこもりなどの問題の解決にもつながってくる
ものと考えます。

 和の心を見つめ直すことで、従来の見方では右翼となる万世一系派と左
翼となる九条護憲派が重なる面も出てきます。右派左派、保守革新といっ
た座標軸が転換し、議論の土台が大きく様変わりする可能性があります。
 夏の参院選の結果にかかわらず、今後の政界再編も究極的には和の心、
日本をどうとらえるかにより帰すうが決するものと考えます。
                               以上

(奥州市 きもの和文化プロデューサー 41歳)





【ご参考】
  論文  和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本

  論文  日本国憲法と武士道精神 〜 和の心による国づくり  

  掲示板 皇位継承と和の心 ― 万世一系と君民共治

  オンライン出版 皇位継承と和の心 ― 天皇の子が天皇とならない理由



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