長根英樹 メッセージ
 ― 論文&マスメディア掲載 ― 

「岩手日報」2008.07.22
  日報論壇 〜 「浄土の心」と「和の心」
 

「浄土の心」と「和の心」   長根 英樹     2008.7.22


 ユネスコは平泉の文化遺産について世界遺産への「登録延期」を決定し
ました。これを虚心に受けとめ、あらためて「浄土の心」と「和の心」に
ついて熟慮を深めることが重要と考えます。
 世界遺産登録は、目的か手段か。貴重な遺産を受け継ぐ立場にあるわれ
われがなすべきは、浄土の心の意味を見つめ直し、現代に生かしていくこ
と、実態を高めていくことと考えます。
 それこそが、浄土の心の普遍的な価値を訴求する最大の方法論になるも
のです。
 平泉の心=浄土の心は、決してそれ単独で生まれたものではありません。
岩手の心、和(日本)の心を背景として生まれ、そして岩手の心、和の心
に昇華還元されたものといえます。
 今なすべきことは、浄土の心を通じて岩手の心、和の心の神髄、その普
遍的な価値を探求していくこと、現代に昇華させていくことと考えます。
 「平和希求」「万物共生」「自然との融合」といった心は、まさに岩手
の心、和の心の神髄です。殊更に平泉の心、浄土の心としてとらえること
は逆に普遍性を損ね、大きな価値を狭い枠にはめ込めることにつながりか
ねません。
 新渡戸稲造の心、宮沢賢治の心は、浄土の心から生まれたものというよ
りは、浄土の心により充実された岩手の心、和の心から生まれ、それぞれ
に岩手の心、和の心に還元されたと考えるべきでしょう。
 浄土の心と武士道精神、浄土の心と理想主義、浄土の心と日本国憲法、
浄土の心とイラク問題、浄土の心と日本の格差問題。
 これらを考えるときに、もっと幅広く和の心という観点からとらえた方
が、より深い思考、解決が望めるものと思います。
 和服、和食、和室という言葉はありますが、浄土服、浄土食、浄土室と
いう言葉はありません。
 地域に根ざした衣食住、行事風習、文化遺産等を身近な形で、温故知新
で見つめ直すことで、和の心、和の文化の素晴らしさ、普遍性を見いだす
ことができます。それこそが、真の食育、衣育、住育といえるでしょう。
 このようにして、地域に根ざして和の心を見つめ直し、現代に昇華させ
ていくことが重要であり、それこそが地域の立て直し、国の立て直しの本
道になるものと考えます。
 平泉の問題をこのようにとらえ直したとき、県北、沿岸の人々も含めた
真の県民運動として、県民生活、県文化の向上が図られ、浄土の心の普遍
性訴求も容易になっていくものと考えます。
                               以上

(奥州市 きもの和文化プロデューサー 42歳)





【ご参考】
  論文  和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本

  論文  日本国憲法と武士道精神 〜 和の心による国づくり  

  掲示板 皇位継承と和の心 ― 万世一系と君民共治

  オンライン出版 皇位継承と和の心 ― 天皇の子が天皇とならない理由



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