摂政論と和の心 2017.01.30 | ||
小沢一郎自由党代表は1月24日の定例会見において、天皇の譲位 問題に関し摂政で対応(譲位なし)の方向性を示しました。 これは安倍自公政権・有識者会議が示唆する特例法による一代限り での譲位とも、民進党の皇室典範を改正しての恒久的譲位(女性宮家、 女性・女系天皇も)とも異なる第3の道となります。 小沢代表いわく、天皇の地位は日本国憲法第1章第1条において 定められておりそれに基づく皇室典範もある。為政者の思惑による 天皇、皇位の政治利用等、歴史の過ちを繰り返さないようにとの反省 を踏まえて明治以来一世一元の制度が先人によって確立されている 問題である。加齢や病気で難しい時は摂政を置くことになっている。 昭和天皇は大正天皇の摂政宮(せっしょうのみや)として公務をなさっ た。そういう前例も間近にあるわけだから。とのこと。 ここで小沢代表の言う一世一元は、在位途中での改元(天変地異や 疫病、経済低迷など縁起を勘案等)の否定のみならず終身在位(終身 元号)も含んだもので、皇位の移行・改元に人為的な要素は加えず 天にのみ委ねるという、生死を重んじそれを個人的にも国家社会的に も天意として従容と受け止める和の心が根本になっているものと解釈 します。 天皇の譲位、生前の退位は、どのような形であれ現行憲法体系では 閉じられている人為的な皇位の移行に道を開くものであり、時の為政 者、権力者、内外の勢力等による皇位への関与の危険性をはらむもの となります。 そもそも現行憲法体系では、0歳での即位もあり得るものと規定され ており、即位・在位においていわゆる公務は必須のものとは位置づけ られていません。未成年の天皇が成人するまで、国事行為も含めて 摂政が補佐することで十分に在位が相当なものとして「象徴」が規定 されています。むしろそれだからこその「象徴」と解するべき枠組み、 歴史伝統の昇華と捉えるところです。 この点、有識者会議の論点整理においては0歳即位の視点、象徴 の意味合い捉えが抜け落ちており、幼少での即位と摂政の関係をも 否定するような意見も含めて、本来の優先度、上位概念か下位概念 かに基づく整理のない意見の羅列になっている面が見受けられます。 また前回200年前の光格天皇による譲位時とは、立憲君主制すな わち憲法に明記された天皇の地位という面においても情報環境の面 でも大きく異なっています。 現在は譲位した前天皇の顔も新天皇の顔も、皇太后の顔も皇后の 顔も、折々の場面、所作等も国民がテレビ、新聞、インターネット等に よりリアルに思い浮かべられる情報環境であり、譲位後の前天皇に対 する国民感情、尊崇の念は簡単に薄まるものではありません。内心の 問題として、新天皇よりも前天皇をありがたく思い相応しいと待望する 国民も一定数見込まれ、存命である以上どちらの天皇(前天皇、新天皇) に心を寄せるかという意識の分裂は避けられません。 更に譲位の恒久化となれば、場合によっては上皇(太上天皇、前天皇) が2名となり元天皇も含めた3人の天皇陛下が並立する可能性さえ あります。これは権威の分散、多重性そのもので、憲法1条の象徴、 国民総意と矛盾することとなります。すなわち憲法1条は実質的に1人 の天皇のみを前提とした規定であり、譲位、上皇とは相容れないもの となります。 この点は憲法99条においても同様で、現在皇室に関しては天皇の 他に摂政のみを明示して憲法擁護義務を定めており、摂政以上の影 響力を有する「陛下」たる上皇(前天皇)に関しての規定はありません。 やはり憲法においては天皇の唯一性が大前提となって全体が構成 されていると解されます。 従来の国会論議、内閣見解において譲位が否定されてきたのはこの ような重大な意味があってのことなのであり、あらためて譲位、上皇を 規定するのならば、単に皇室典範の改正のみならず憲法の改正も含め た正々堂々の恒久的整備が必要となり、それこそが憲法尊重、立憲主 義と言えます。 今あらためて、譲位の是非に限らず、そもそもの皇位皇統、皇位継承 の問題に関して、和とはなにか、皇位皇統と和の心、皇位は預かりもの (わが身かわいさ、わが子かわいさ、私意私情優先、皇位の私物化は 許されない)、歴史の反省を踏まえた伝統の昇華という観点から、先人 の蓄積、英知、種々の規定確立の意味を十分に吟味の上の根本議論 が求められているものと考えます。 以上 2017.02.02 加筆修正 ※小沢一郎自由党代表 20170124 定例会見 譲位関連2分程 https://www.youtube.com/watch?v=KcqXcTYGsZY&t=22m59s ★★★ 2017.02.02 自由党が政策審議会で小林よしのり氏を招き、 天皇の退位に関し意見を聞いたとのこと。 その後、小沢代表は小林氏と食事をして「女性宮家」の創設 について合意を得たとの情報があり。 ・小林氏ブログ 自由党で講演、小沢一郎氏と合意 https://www.gosen-dojo.com/?page_id=906 私は、自由党、小沢一郎代表の今後の動き方如何に関わらず、 女性宮家、女性・女系天皇には反対の立場で、 旧皇族筋(子孫)の復籍(皇族への編入)、宮家の創設が筋と 考えています。 ★★★ ◇ 参考過去論文、メディア掲載等 ■譲位、皇統と和の心 ― 伝統の論じ方 2017.02.15 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/39_title_msg.html ■譲位と憲法論 2016.08.16 8.8 天皇陛下ビデオメッセージを受けて http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/37_title_msg.html ■「朝日新聞」2005.10.28 三者三論 〜 女性天皇どう考える 現制度の方が皇室安定 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/28_title_msg.html ■ 和の国、和の心 ― 天皇陛下と日本 2005.02.18 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/27_title_msg.html ■ 「日本国憲法と武士道精神」 〜 和の心による国づくり 2004.01.06 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/messages/26_title_msg.html ●サイト内掲示板 皇位継承と和の心 http://nagane.kimono.gr.jp/hideki/mess/nippon/ |
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